腰椎すべり症
腰椎すべり症は、腰部の骨である腰椎が正常な位置から前方にずれてしまう状態を指します。この症状は、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあり、多くの方がその痛みやしびれに悩まされています。しかし、腰椎すべり症と診断されても、必ずしも手術が必要なわけではなく、また、痛みの原因が骨のずれだけではないことも少なくありません。ここでは、腰椎すべり症について深く掘り下げ、その症状、一般的な治療法、そして当院でのアプローチについて詳しく解説していきます。
腰椎すべり症の分類とメカニズム
腰椎すべり症は、主にその発生原因によって大きく3つのタイプに分類されます。
腰椎変性すべり症
これは、加齢に伴い腰椎や椎間板(腰椎と腰椎の間にあるクッション材)などが変性・変形することで、徐々に腰椎が前方にずれていくタイプです。特に、第4腰椎と第5腰椎の間で発生することが多いとされています。長年の積み重ねや姿勢の癖、あるいは遺伝的要因なども関与していると考えられています。椎間板の水分が減少し弾力性が失われることや、椎間関節の変形によって、腰椎全体の安定性が損なわれ、結果としてずれが生じやすくなります。
腰椎分離すべり症
これは、腰椎の特定の部位である「椎弓(ついゆみ)」と呼ばれる上下の腰椎をつなぐ関節部分に疲労骨折が生じ、その後に腰椎がずれてしまうタイプです。この骨折は「腰椎分離症」と呼ばれ、特にスポーツによる使い過ぎや繰り返し行われる腰への負担が原因となることが多く、成長期の若い世代にも多く見られます。特に、第5腰椎の分離が多く、その結果、第5腰椎とその下の仙骨がずれてしまうケースが頻繁に起こります。分離症自体は無症状であることも多く、それが進行してすべり症となるケースもあります。
先天的なすべり症
稀にではありますが、生まれつき腰椎の形態に異常があり、それが原因ですべり症が生じるケースもあります。これは、腰椎の形成不全などが関与していると考えられています。
腰椎すべり症の症状
腰椎すべり症の主な症状は、以下の通りです。
- 腰痛: 最も一般的で、鈍い痛みから鋭い痛みまで様々です。活動時や特定の姿勢で悪化することがあります。
- 下肢の痛みやしびれ: ずれた腰椎が脊髄やそこから伸びる神経を圧迫することで、お尻、太もも、ふくらはぎ、足にかけて痛みやしびれが生じます。
- 間欠性跛行(かんけつせいはこう): これは、神経の圧迫が強くなると現れる特徴的な症状です。しばらく歩くとお尻や太もも、ふくらはぎに痛みやしびれが出て歩行が困難になり、休憩すると症状が和らぎ、また歩けるようになるというサイクルを繰り返します。座ったり、前かがみになったりすることで症状が軽減する傾向があります。
- 脱力感: 脚に力が入らないと感じることもあります。
- 排尿・排便障害: ごく稀ですが、神経の圧迫が重度の場合、膀胱や直腸の機能に影響が出ることがあります。
これらの症状は、腰椎が正常な位置からずれることで、脊髄やそこから枝分かれする神経が圧迫され、炎症や血行不良が生じることによって引き起こされると考えられています。
腰椎すべり症の一般的な治療
腰椎すべり症と診断された場合、まず選択されるのが「保存療法」です。これは、手術以外の方法で症状の改善を目指す治療法です。
保存療法
- 薬物療法: 痛みや炎症を抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や神経痛に効果のある薬、筋肉の緊張を和らげる筋弛緩薬などが処方されます。
- 物理療法: 温熱療法、電気療法、牽引療法などが行われることがあります。これらは、痛みの緩和や筋肉の血流改善を目的とします。
- 装具療法: コルセットなどを用いて腰部を固定し、腰椎への負担を軽減することで、痛みの軽減を図ります。
- 運動療法: 医師や理学療法士の指導のもと、腰部の筋肉強化(特に体幹を支えるインナーマッスル)や柔軟性の向上、血液循環の改善を目的とした運動が行われます。ただし、自己判断での運動は症状を悪化させる可能性もあるため、必ず専門家の指導を受けることが重要です。
- 神経ブロック注射: 痛みが強い場合、神経の炎症を抑えるために、神経の周りに局所麻酔薬やステロイドを注射することがあります。
手術療法
保存療法を数ヶ月行っても症状の改善が見られない場合や、症状が進行して間欠性跛行が著しい場合、あるいは神経麻痺が進行している場合などには、手術が検討されます。手術の目的は、ずれた腰椎を正しい位置に戻し、神経の圧迫を取り除くことです。
- 除圧術: 神経を圧迫している骨や靱帯の一部を切除し、神経の圧迫を解除する手術です。
- 固定術: ずれた腰椎を金属製のプレートやスクリューで固定し、安定させる手術です。場合によっては、骨を移植して癒合させることもあります。
手術によって腰椎のずれは改善されますが、術後も痛みが残るケースや、手術によって新たな問題が生じる可能性もゼロではありません。
まきの接骨院での腰椎すべり症の治療
当院では、腰椎すべり症の症状に対するアプローチとして、一般的な病院での治療とは異なる視点を持っています。
症状の原因に対する新たな視点
病院でレントゲンやMRIを撮影すると、腰椎のずれが確認され、「これが原因で痛みやしびれが出ている」と説明されることがほとんどです。しかし、当院では以下の点に注目し、その考え方には疑問を呈します。
- 神経の圧迫と症状の関連性:
- 神経は圧迫に強い: そもそも神経は、少々の圧迫ではすぐに症状が出るような弱い組織ではありません。例えば、歩いているだけで足底の神経が圧迫され痛みやしびれが出たり、座っているだけでお尻や下肢に症状が出たりすることは通常ありません。寝ていても背中の神経は重力で圧迫されているはずですが、痛みを感じることは稀です。
- 神経損傷は麻痺を伴う: もし本当に神経が損傷されるほどの圧迫があれば、それは「麻痺」という形で現れます。麻痺とは、運動神経麻痺(例:足が動かせない)や感覚神経麻痺(例:痛みを感じない、感覚が鈍い)といった症状です。単なる痛みやしびれだけでは、神経が完全に損傷していると考えるのは難しい場合が多いです。
- 症状の変動と腰椎のずれ:
- 症状が出る時と出ない時がある: 腰椎すべり症と診断されても、症状が出る時と出ない時があるのはよくあることです。もし神経圧迫が原因であれば、神経が何かに触れている間は常に症状が出ているはずです。この変動は、神経圧迫以外の要因が関与している可能性を示唆します。
- 身体を動かさなくても痛みがない: 体内にある腰椎のずれが原因ならば、動かしていない状況でも腰椎の位置は変わらないため、常に神経に何か触れていたり、圧迫があったりするはずです。しかし、安静時には痛みが軽減するケースも多く見られます。
- 保存療法と症状の軽減:
- ストレッチやマッサージで軽減: ストレッチやマッサージを受けると痛みやしびれが軽減することがあります。もし腰椎のすべりが原因であれば、腰椎の位置の問題や脊髄などの神経問題であり、ストレッチをしてもその根本的な原因は変化しないはずです。しかし、実際に効果があるのは、筋肉の緊張や血行不良が症状に大きく関わっていることを示唆しています。
- 温めると痛みが軽減する: 温める効果は血流の改善であり、腰椎の位置には直接関係ありません。それでも痛みが軽減するのは、血行不良や筋肉の緊張が症状の原因となっている可能性が高いことを示しています。
これらのことから、当院では「痛みと構造の変化は必ずしも一致しない」という考え方を重要視しています。つまり、レントゲンやMRIで確認できる腰椎のずれがあっても、それが直接的な痛みの原因ではないケースが多々あると考えています。
当院の施術方針
当院では、腰椎の位置を無理やり戻すような施術は行いません。それよりも、痛みの原因となっている可能性のある以下の点に重点を置いたアプローチを行います。
- 周辺組織へのアプローチ:
- 筋肉の緊張緩和: 腰椎がずれることで、その周囲にある腸腰筋などの筋肉が過剰に引っ張られ、緊張し、痛みを引き起こすことがあります。また、筋膜や靭帯が伸ばされることでも痛みを感じることがあります。当院では、これらの筋肉の緊張を緩和し、柔軟性を取り戻すための施術を行います。
- 血流改善: 神経が圧迫され血流が悪くなると、酸素不足になり神経痛が発生することがあります。施術により血流を促進し、神経への栄養供給を改善することで、症状の軽減を図ります。
- トリガーポイント療法: 筋肉の中に存在する「トリガーポイント」と呼ばれる過敏な部分が、痛みやしびれの症状を引き起こすことがあります。当院では、これらのトリガーポイントを特定し、適切なアプローチを行うことで、症状の改善を目指します。
- 神経へのアプローチ: 直接的な神経の圧迫を解除するのではなく、神経の機能低下の原因となっている周辺組織の緊張を和らげたり、血流を改善したりすることで、神経の働きを正常に戻すことを目指します。
- 全身のバランス調整: 腰椎のずれは、全身のバランスの崩れによって引き起こされている可能性もあります。当院では、全身の姿勢や動作パターンを評価し、根本的な原因にアプローチすることで、症状の再発防止にも努めます。
当院の施術は、ずれてしまっている腰椎を無理に元の位置に戻すことを目的とするのではなく、「すべり症だけど痛みはないし、行動に何の問題もない」という身体を目指します。実際に、腰椎のずれがあっても痛みがなく生活している方は多くいらっしゃいます。
安静の必要性について
成長期に発症した腰椎分離すべり症の場合、骨がまだくっつく可能性があるため、無理な運動は避ける方が良いとされています。しかし、大人になってから数年前に診断されたものであれば、過度な安静は必ずしも意味がないと考えています。むしろ、適切な運動や施術によって、周囲の組織を柔軟にし、血流を改善することが、症状の軽減につながる可能性が高いです。
手術について
手術は、腰椎のずれが痛みなどの原因だと考えて行われるものです。しかし、もし痛みの原因が骨のずれだけではない場合、手術をしても症状が改善しないケースがあるのはこのためだと考えられます。当院では、安易な手術を推奨せず、まず保存療法や当院での施術を通じて、痛みの根本原因を探り、症状の改善を目指すことをお勧めしています。もし、当院での手技療法を行っても変化がない場合や悪化していく場合には手術を選択する事をお勧めします。ですので手術はできるだけ受けたくない方は当院の整体を受ける価値はあると言えるでしょう。
おすすめの施術プラン
当院では、整形外科にも通院しながら、当院で整体を受けるという併用をおすすめしています。整形外科での診断や画像検査は、腰椎の状態を把握するために非常に重要です。その上で、当院では、画像には映らない、しかし痛みの原因となっている可能性のある筋肉や神経へのアプローチを行うことで、より効果的な症状の改善を目指します。
患者様の声
60代 女性
腰椎すべり症と診断され、手術を勧められていましたが、セカンドオピニオンとしてこちらに相談しました。レントゲンでは確かにずれていましたが、先生の説明を聞いて、痛みの原因はそれだけではないと納得できました。施術を受けるうちに、あれほどひどかった足のしびれが少しずつ和らぎ、今では長時間歩けるようになりました。手術を受けずに済んで本当に良かったです
10代 男性
スポーツをしている息子が腰椎分離すべり症になり、練習を休むことに。こちらの先生に診てもらったところ、骨のずれだけでなく、周りの筋肉の使いすぎも原因だと言われました。施術と、自宅でできるストレッチを教えてもらい、徐々に痛みがなくなり、練習に復帰できました。痛みが引いてからも、再発しないための体の使い方を教えていただき、感謝しています
Q&A
Q1: 腰椎すべり症は一度なると治らないのでしょうか?
A1:腰椎のずれ自体は完全に元に戻らないケースもありますが、症状は改善し、痛みなく日常生活を送れるようになることは十分に可能です。当院では、腰椎のずれがあっても症状が出ない身体を目指します。
Q2:運動はしても良いのでしょうか?
A2:症状の程度やタイプによって異なります。自己判断での激しい運動は避けるべきですが、適切な指導のもとで行うストレッチや体幹トレーニングは、症状の改善に有効な場合があります。必ず専門家にご相談ください。
Q3:温湿布と冷湿布はどちらが良いですか?
A3:急性の強い痛みや炎症がある場合は冷湿布、慢性的な痛みや血行不良が原因の場合は温湿布が効果的なことが多いです。ただし、個人差があるため、ご自身で試してみて心地よい方を選ぶか、専門家にご相談ください。
Q4:手術を勧められましたが、受けたくありません。どうすれば良いですか?
A4:手術は最終的な選択肢であり、必ずしも全員に必要なものではありません。当院では、手術以外の方法で症状の改善を目指すことができます。まずはご相談いただき、状態を詳しくお聞かせください。
Q5:施術は痛いですか?
A5:基本的に痛みを感じにくいソフトな施術を心がけています。筋肉の緊張が強い部分では多少の刺激を感じることがありますが、患者様の状態に合わせて調整いたしますのでご安心ください。
腰椎すべり症でお悩みの方は、一人で抱え込まず、ぜひ一度当院にご相談ください。あなたの痛みの根本原因を見つけ、快適な生活を取り戻すお手伝いをさせていただきます